過去拍手文。+2+





one,



「なんでこんな時間に呼び出したわけ」



夜の公園はそれはもう寒くて誰もいなくて淋しい。



「誕生日のあなたを独り占めしたかったので、」

「………ふーん」

「けどプレゼントは用意してないっていう」

「うわ」

「すいませんね」

「いや、別にいいけど」

「だからかわりに、」

「?」

「キス、してもいいですよ」

「………あんたがしてほしいんじゃなくて?」

「鳴海さんもしたいでしょう」



数秒の視線の格闘の後(折れたのはどちらだったか)軽く触れ合わせた。



「おめでとうございます」



だいすきなあなたが産まれてきてくれた今日は素敵な記念日。









+









two,


今この遠くなっていく後姿を必死で追いかけたなら、何かがどうにかなるのかもしれない。

でもなんで?
嗚咽を止めることすらも、



もうウンザリだから。
あたし知ってるんだから、置いてかないで。
全部全部嘘臭い。
簡単にすきなんて言わないでよ。
簡単に、捨ててかないでよ。



たたの一度すらも振り返らないの、









いつのまにか、取り返しの付かないことになってた。

気付いたあたしは今も棒立ちのままだ。









+









three,



「っ……!何すんだよっ……」



勢いよく抜かれたピアス。



「女物着けてるのが気に入らない、と言ったら満足ですか」

「……気に入らないんですか」

「気に入りません」

「なんで」

「………やですよ」

「(……可愛い)」



これぐらいの嫉妬なら可愛いもんだろう。









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four,



ニュースの合間に寝息が聞こえる。
期待してたよりずっと静か。



「………おやすみですか」



ソファで眠ってしまった彼。どうしようかな。
風邪を引かせたくないし。

起こしてベッドに行くよう促す?
それとも一緒に寄り添って眠ろうか。



「………」



後者をとった。

ゆっくり肩に頭を預け。



「(………心地良い)」



頬にかかる柔らかな髪も、前髪を掠める穏やかな寝息も全部すき。

心安らぐのは多分こうゆう時だ。



静かな夜に身を委ね。
なるべく優しい夢を見て。



ね。









+









five,



「ぶっちゃけさー、あんたたちどこまでやったの?」



そう聞いたのがまどかおねーさん。

ブッ、とコーヒーを噴出したのは結崎。

”汚い”と眉間に皺を寄せたのが鳴海。




「どっ、どこまでって!?」

「首、痕ついてるわよ」

「え、わ、付けないでって言ったのに、」

「あー、悪い。」

「もうっ……」

「わざとだけど」



・・・。









その後何日か彼女は口を利いてくれませんでした。









+









six,



今日もタバコの煙が立ち込めるこの部屋で、ピアニストは渋面で。



「……禁煙はどうした」

「やめたわ」



キリエは投げやりに答える。



「意味ないのよ。ってか、なんであたしが我慢しなきゃなんないんだって話」

「そうか」



ピアニスト様もどうでもいい様子。



「………でもこれからずっと頑張るって約束するんならあたしも一生タバコやめてあげたっていい」

「無理だろう中毒じゃ」

「無理じゃない」



眉間に皺を寄せて。



「どうなの?」

「……言われなくても頑張るつもりだ」

「……そ。」

「でもタバコはやめろ、体に悪い」

「それを理由に、頑張ってほしかったんだけどね。」



肩を竦めた。









+









seven,


朝が来るまで喋り倒したい。

あなたは頷いてくれたらいいから、
喋り疲れたら隣で一緒に寝て欲しい。

お願いだから一言も聞き逃さないで。

私の口から出てくる取り留めのない本心を。


私の尽きない話をずっと聞いてくれればなぁ。









+








eight,



いつでも俺を前に前に突き動かすのは、その笑顔だったり仕草だったり声だったり。

時に、嘘だったり。



あんたなんだよ、俺の世界の中心にいるのは、いつだって。

その場所から動かなくて困るな。
いつ見てもそこにいるものだから、そこから目が離せないんだよ。



出来ることなら中心より、もっと傍に。



前に前に前に前に前に、前進するほど距離が遠くなっていく気がするのだけど、後ろを見ながら、小さくなるその姿。






次の一歩で世界が変わった、
俺は慌てて前を見た。



それからハッとして後ろを見た。

いつのまにかたくさんの人。
いつのまにかあんただけがいなくて。



あれあんたって誰だっけ、どんな顔でどんな仕草でどんな声で。

よく思い出せないよ。なんだっけ。

いつでも俺を動かしたのは、いつでもそこにあったのは、





半永久の原動力を与え、彼女はそれ以外を何も残さず消えてった。

彼は何にも気付かない。









+









ten,



本気にならないことが、一番、楽。



そんな甘ったれた考えがこの距離を作ったのだろうか。

馬鹿みたいだ。



本気になる・っていうのは、自然現象なのに、馬鹿げてるよな。



「わかってたくせに」



皮肉に言うから皮肉に返した。



「怖かったくせに」



彼女はキョトンとし、苦笑し、腕に入った。





伝えればいいのだ。

自分がいかに、本気かを。









+

九番はアレンジして微裏に掲載しております。